つくり手×つくり手INTERVIEW 第11回 KOZO INTERIOR STUDIO
2015年10月05日

今回は飛騨コレクション制作部の浦西が、KOZOインテリアスタジオさんにインタビューにやってきました。
以前から人の喜ぶ顔が見たい、そのための仕事がしたいと言い続けていた阿部くんの、詳しいお話が聞けるのが
とても楽しみです。

―ところで阿部くんは今年でいくつになったんだっけ?
37才です。
飛騨に移り住んで14年になりますね。
―「飛騨の木工房の会」の中で一番の若手で、唯一20代なんて話していたのは、もうかなり昔だね。
時間が経つのは早いもので・・・
あらためて聞くけど、飛騨に来るキッカケや木工に興味を持ったことって何かあったの?
実家が建具やアルミサッシを販売している会社で高校をでて手伝っていたのですが、4~5年たった頃に
住宅業界ではシックハウス症候群という言葉をよく耳にするようになりました。
その時に単純に疑問を覚えたんです・・・。
35年ローンを組んで家族のために建てたマイホームのせいで家族が病気になるなんて!!
当然うちで収めていた大手建材メーカーから仕入れていた化粧合板でできた建具はその原因でした。
単純に自分の仕事にも疑問が・・・
―シックハウス症候群、かなり話題になったよね。
暮らし全般に使われているものすべてへの問題意識も高まった時期だったような気がします。
そこで阿部くんは動き始めた訳だね。
いや実は何にも動いたわけではないんです・・・
ただそんな時期に今の奥さん、当時の彼女へのプレゼントに現場で出る端材で素人ながら机を作りました。
それを見て彼女が「 これ仕事にしたら良いんじゃない? 」ってことで、
行動力のある彼女が先に動いて(笑)
「ラジオで飛騨高山が家具の産地だと聞いたので正月に旅行に行こう!」と言い出したのが
すべてのはじまり、すべてのキッカケです。

―奥さんとの出会いで、今の阿部くんがあるようなもんだね。
それは横に置いといて!!
とにかくお正月に高山に行き、その1月中旬に再度高山に行ったんです。
木工房やらメーカーさんのショールームなどを回り、さらに2月には職業訓練学校の二次試験を受け、4月には高山に引っ越していました。
今思うと誰ひとり知り合いがいないのに、ただただ勢いだけで来てしまったって感じです。
―当時の木工職業訓練校、今では「木工芸術スクール」って言います。
まあ今日は学生時代のお話は省いて、卒業後に勤めていた時の話を少々お聞きしたいですね。
小さな木工房って、勤めるにはなかなか厳しいようですが・・・
卒業後は小さな木工房に勤めましたが、やっぱり訓練学校を出たとは言っても機械に少し触れる程度で、
実際にはまったくの木工素人なんです。
当時の先輩がすぐにやめてしまった事もあり、社長も忙しくって・・・
木工のイロハを教えてくれる人もおらず、どうしても製作に時間がかかり、毎日毎日夜中まで仕事をしてました。
―最近の木工芸術スクールの生徒さんと話すと、みんなまずメーカーに勤めて安定した生活をしたいって思っているようなんだけど、独立志向が薄れてきているのかなあ~
これからの飛騨の木工のためには、メーカーだけじゃなく、人が長く勤めることができる「木工房」も必要かもしれないですね。
何か、これから木工房で働きたいという人へのメッセージってある?・
ただ漠然と木工がしたいというだけでは無く、木工の中でも「椅子の制作がしたい」とか
「プロダクト」がしたいとかいやいや実は販売がしたいとか、
自分が本当にやりたいと思うことをしっかりと考えておくとしっかりとした選択ができると思います。
―じゃ、そろそろ阿部くんの核心に迫りたいと思います(笑)
よく「人に喜んでもらえればいいんです」みたいなことを言ってるけど、その辺りを語ってもらおうかな。
最近、気づいたんです。
自分は単純に「人に喜んでもらうと嬉しくて、それが自分のエネルギーになる」

―なるほど。
でも阿部くんのモノづくりとどうつながっていくの?
今、自分の持っているモノのなかで一番得意な事それが「木工での製作」なんです。
つまり、それが「人を喜ばせるの一番良い方法」だと思ってます。
ただこの先、自分がやりたいと思いそれが人を喜ばせる事が出来るのであれば変化はしていくかと思います。
例えば木工の販売だったり、企画だったり・・
―ただ木工での制作だけではなく、企画や販売もやってみたいと。
そう言えば、阿部くんは人と話すのは好きなんだもんね。
人に喜んでもらうこと、また同時にそういうことを仕事にできていていいですね。
ちゃんと独立をして7年目くらいですが、とにかくガムシャラにやってきましたが、
実は何となく分かってきた事があります。
一人で独立するという事は、普通のどんな企業でも行われている「営業、企画、製作、その他諸々」を一人でやる事。
普通の会社はそれをみんなで協力し合ってやっている訳です。
よくよく考えるとそれを一人でやるってのはよほどのエリートやスーパーマンでしか無理だと思いました。
逆に仲間で協力をする事で成し遂げられる事、仲間で協力する事でしか成し遂げられない事があるように
感じはじめています。
みんなでモノを作るって楽しそうじゃないですか!!
この「 木工房の会 」も、そのメンバーで行っている「 イベント 」もその事を意識していければと思います。
―なるほど、なるほど。
でも、さらに「人に喜んでもらえればいい」ってところを掘り下げたいな~
ところで阿部くんって、地元愛って強いよね。
地元って、もちろん今住んでいる朝日村のことだけどね。

今まで話した事でもそうなんですが、この性格が暮らすのに「 朝日 」という場所は
最適だったように思います。
地域の祭りや消防団などのボランティア活動、商工会青年部の活動だったり、地方では若者の減少が目に見えてわかります。それらの活動の維持が難しくなってきているのが現状です
地元の方にとって「 僕のような若い年齢層が移住する意味 」ってそいう事に参加する事だと思ってます。
なので僕はそういった活動ヘはできるだけ参加させてもらってます。
僕はなにげなくやっていたのですが色々聞くと、実はそれって一般的には難しいみたいです。
僕の性格だから、地元の人も受け入れてくれるし、
「皆、よそから来た人なのに色々強力してくれてありがとう」って言ってくれます。
今住んでる地域以外の人からも冗談で、「うちに越してくれれば良かったんに~。空家ならいくらでもあるぞ~」って。しかもいくつもの地域からも言われます。
特に同世代の人に言ってもらえるのが嬉しいです!!
そんな会話がエネルギーになるので続けられるんだと思います。
都会だと利用されるイメージの感が強くてしんどかったんですが、
今この場所には「 自分の居場所 」がちゃんとある気がします。
―あ、忘れてた~
木工房めぐりのワークショップのお話も聞かなきゃ。
今の話に繋がるのですが、そんな自分を受け入れてくれる「 朝日 」
それが僕のモノ創りや暮らしている上でのパワーになるので、そこのために何かできればと思いました。
だから作品も当然、見てもらうのですが今年は朝日の事を知ってもらいたいと思い朝日の名産品「ヨモギうどん」
を手打ちで体験してもらいたいと思いました。
色々調べるとヨモギの効能って凄いんですよ!!当日は飛騨各地で薬草講座や子供の為の森の幼稚園など
をされている講師の方をお呼びしてその効能とお供に朝日を満喫していただければと思います。
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KOZO INTERIOR STUDIOの詳しい情報はこちら http://kozostyle.jimdo.com/
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飛騨の木工への愛情、さらに朝日村への深い愛情いっぱいの阿部くんでしたね。
そんな阿部くんのKOZOインテリアスタジオは、住まいと工房・ショウルームが一緒になった素敵な空間です。
ワークショップも楽しみです。
ぜひ、みんなで朝日村へも行こう!!
みなさんも直接会って、ぜひその人となりに触れてみてくださいね!
ここでは書ききれない、書けない?お話もたくさん。心地よい秋の一日、飛騨の工房につくり手にぜひ会いにきてくださいね♪
「つくり手×つくり手インタビュー」は、イベント開催まで、随時更新!
いろんな面白いつくり手の話は、まだまだ続きます。次回もお楽しみに!
つくり手×つくり手INTERVIEW 第10回 DESIGN & CRAFT kochi(東風)
2015年09月13日

「つくり手×つくり手インタビュー」第10回。
今回は、DESIGN & CRAFT kochi(東風)の東さんご夫妻のお話を聞きに、下呂大鹿野工房の山口がお伺いしました。



高山41号線の交差点、西之一色町から車で5分程のところに、ショップ 兼 工房 兼 住居を構えているkochiさん。
ショップには、kochiさんの作品の他、お二人が選んだ作家の作品やインテリア雑貨が並び、併設されている「JIRO COFFEE」で休憩もできます。
以下、東さん:A、聞き手:Y
―これまでの経歴
A:二人とも、高山の木工の学校を出た後、家具メーカーに就職しました。会社に勤めながら、学校の仲間と共同の工房で作品を作ったり、展示会を行なったりしていました。そのうちに、妻が会社を辞め、お店を始めました。最初のうちは、作家ものの作品を中心に置いていました。その後、自分も会社を辞めて独立。自分の工房を持ちました。
―市街地から山手へ引っ越し
A:今の場所に移ったのは昨年で、それまではグリーンホテルの近くにお店がありました。(住居と工房は別)観光客はたくさん来ましたが、駐車場が狭く車も多いので、地元の人が来にくいところでした。
今の場所は、駅からは少し遠いが、周辺に観光施設があり観光客もよく来るし、外人もたくさん来るし。地元の人も前より来やすいといって遊びに来てくれるようになりました。
―飛騨高山博のパビリオンに使われた建物を改修
(Y:とても素敵な空間、不思議な建物ですね。)
A:この建物は、飛騨高山で行われた博覧会のときに使われた建物を移築したものだそうです。それを改修しました。階段の手すりを水道管にしたり、いろいろ工夫があります。
(階段の下にベビーベット)
A:カフェオーナーの赤ちゃんのベッドです。お客さんにも見てもらいながら、カフェがオープンしているときはここに赤ちゃんがいます。
―ショップ 兼 工房 兼 住居
A:お店には、木工の小物だけでなく、暮らしに関わるいろいろなジャンルのものを置いています。その方がたくさんの人が来やすいと思うからです。カフェスペースを併設したのもその発想です。ショップの真横に工房があるので、ちょっと見てもらうこともできるし。今度のオープン工房でも、あまりいつものスタイルを変えずに見てもらえます。
(Y:いつもお子さんと一緒にいられますね。)
A:住居も兼ねているので、子供(小学校と保育園の娘さん)が帰ってきたとき、いつもいられるのがいいですね。前は、お店と工房、住居が別だったので。子供たちは、工房の木端で遊んだりしてます。
(工房には赤い三輪車がありました)



―小物中心の創作スタイル
文房具などの小物を中心に作っています。家具だと、たくさんの種類の机や椅子はありますが、用途が限られてきます。小物はアイデア次第で様々な用途のものが作れます。最初から小物を作ろうと決めていたわけではなく、やっているうちにだんだんと小物中心のスタイルになってきました。
(Y:直線的なデザインのものが多い気がします。)
そうですね。シンプルでスタイリッシュなデザインのものを作っています。
(一輪挿しやマグネットでくっつくカードスタンドなど、アイデア満載でした。)
―大口の家具、大量生産の小物
(Y:具体的に家具と小物、どう違いますか。)
A:家具と小物では、作り方やお金の動き方が全然違います。家具は、展示会などで当たれば大きいものが一気に売れたりしますが、値段の半分ほどが材料費です。小物は、たくさん数が必要で、ショップに卸したりして販売します。値段に占める材料費の割合は小さく、ほとんどが手間費になります。
だからこそ、小物を作るためには、より効率的に作業を進めることが大切です。
―治具いのち
(Y:棚いっぱい、これ全部治具ですか!)
A:仕事は治具いのちです。作るのは一人でやっているので、よけいそうです。効率よく作業するほど、コストを抑えて、お客さんに良いものを提供できる。そのために必要な機械も、段々と揃えていきました。
最近は、多品種少量を目指しています。いろんな種類のものを少しずつおいてもらえるようにしています。だからこそ、効率が大切。治具いのち。
―ギフトショーやコーディネートの仕事
主に、ギフトショーなど業者向けのイベントに参加しています。自分の作品を置いてくれる店や人との出会いの場でもあるし、自分のお店に置きたいものを見つける場でもあります。作家個人向けのブースには自分と似たスタイルでやっている人もいます。
メーカーに依頼された家具のデザインや、モデルルームのインテリアコーディネートなどもやっています。依頼があれば家具も作ります。展示会やお客さんの層に合わせた作品を作るようにしています。



―ふたりの役割
(妻、薫さん(以下、K)も保育園のお迎えから帰ってこられて、インタビュー再開)
A:基本的には、妻がショップのことをやっています。お店に置くものは、もともと作家ものが多かったけど、今は作家ものに限定せず、だんだんとメーカーのものも増えてきました。コンセプトとしては、手に持てる自分たちの好きなもの、使いたいものを選んでいます。
(Y:商品を選ぶときはお二人で、ですか。)
K:基本的にはそうですね。作家ものは二人で、メーカーのものは完全に私が。勝手に。
A:でも、まあハズすことはないので。やっぱり。でも、俺が勝手に選んだら、「何これ」と言われるかもしれないけど(笑)
K:あんまり意見は合わないよね(笑)
(Y:お店の雰囲気や置いてあるものなど、なんとなく一体感があるし、ふんわりといい感じです)
K:作家ものは、二人ともが「オッケー」といったものにすることにしています。片方が気に入っているだけではダメ。
(Y:置きたいと思う作品は重なりますか。)
K:うん、作品は、けっこう合うね。普段の生活の意見は全く合わないけど(笑)食べ物の趣味とか。外食なんかすると、絶対同じものは注文しないし(笑)
A:商品の開発も、あまり相談せずに、勝手に作っていることが多い。けど、なんとなく二人のイメージのものになっているので。
K:でも、たまに相談すると合わなくて。
A:そうそう(笑)
K:でも結局突き進んでいくので。ね。
(Y:お店も工房も、すてきです。)
A:お店はえいやで始められる。続けるのが大変。みんなお店やればいいのにって思う(笑)
K:スペースを埋めるのが大変、小っちゃいところから少しずつ始めるのがよいかも。
―今後の展望
A:そんなに先を見ながらやっているわけではなくて。目の前のやりたいことをやってきたので。今、やりたいことを今やる。こんな感じでやっていきます。



最後になりましたが、Kochiという名前は、「東風(こち)」から、東さん風ということでダジャレっぽくつけたそうです。
小さなところから、段々と少しずつ、やりたいことをやってきたという東さんご夫妻。
お話を伺っている間も、ちびちゃんたちが家とお店を自由に動き回っていて、とてもかわいらしかったです。
お店の雰囲気も、お二人の雰囲気もすごく素敵で、また遊びにいきたいと思いました。
お店の情報はこちら。http://www.kochi-net.jp/
10:00~18:00 (冬期平日12:00~) 毎週木曜日,第3日曜日定休
コーヒーは水曜、木曜休み。17時くらいまで。とのことです。
お二人とも、ありがとうございました。
コーヒーは水曜、木曜休み。17時くらいまで。とのことです。
お二人とも、ありがとうございました。
Posted by 飛騨の木工房の会 at
22:34
│■つくり手×つくり手INTERVIEW
つくり手×つくり手INTERVIEW 第9回 Arts craft japan
2014年10月03日

みなさんこんにちは。
「つくり手×つくり手インタビュー」第9回。今回は高山市の南東部、朝日町の工房仲間、Arts craft japan
渡邉主税(ちから)、祐子夫妻を工房まめや 鈴木修が訪ねます。
僕の工房から車で3分というご近所さん。2人のことはナイスコンビ!という印象ですが今回はあらためて2人の魅力を探りたいと思います!
ではインタビュースタート!

鈴木 (以下S);まずは主税君の方から、主税君は大学では彫刻を専攻してたんだよね。
主税 (以下T);そうですね。大学では木、金属、石、FRPと4つの素材を扱う中で、3年生頃になってなんとなく木が自分には合うなという感じにはなってきてましたね。
S; その頃は家具は作ってたの?
T; いや全然。 ただ作りたいものをなんとなく作っていただけ。卒業して舞台美術の大道具の仕事を始めて、その時は木で大工仕事のようなことをしてたんだけど、だんだん違和感が沸いてきて...
S; 仕事に?
T; まあ結局作っても、短期間の公演の為のものだからその期間持てばいいつくり方で...なんとなく木という素材に対して加工方法が合っていないというか...素材というのを大事に考えていたんでそこにギャップを感じて、きちんと加工したもの 作りたいなと思って、北海道の家具の職業訓練校に入ったんですね。
S; 素材と加工方法が合っていない。という感じ方は面白いね!それで家具の道に入ったんだ。
祐子ちゃんは?
祐子 (以下Y);私はもともとショップで接客の仕事をしてたんだけど、モノを作るのが好きで、服作ったり、
何か工作したり。趣味でやってたんだけど、だんだん仕事になったらいいなって思うようになって
工作の延長で家具作りに興味があって。それで訓練校に入った。 そこで主税くんと出会うんだね。
S; なるほど。 その後は?
T; 僕は旭川の家具会社に就職。
Y; 私も別の会社だけど家具メーカーに就職。けど...技術は主税くん任せかな(笑)
T; 僕は9年間勤めたけど、初めから独立志向はあったので、もう十分かなと思ったタイミングで独立して2人で頑張ろう!と。 独立するなら北海道ではなく、本州でと思ってはいたので...
Y; 日本地図見ていて、直感的に飛騨高山!ってビビっと来て、主税君に言ったら「いいんじゃない!」って。
S; 主税君そういうところ感覚的だよね!いや2人供か(笑)
Y; そうそう(笑)勢いっていうか...大事だよね! でも今は高山で良かったって思うよね。
T; そうだね!仲間も沢山いて。運良かったよね!

S; 主税君の作るものは隅々がきれいというか、繊細だなといつも思うんだけど。
T; その辺は性格かもしれませんね。
S; 大学で自由に作っていた感覚で、家具の枠を超えたくなることはない?
T; アートの感覚を入れるのは面白いとは思うんですけど、仕事として始めてから、お客さんの意見を 沢山聞く様になって、お客さんの要望に答えていくととても喜んでくれる。 それはやっぱり嬉しいですよね。
Y; 自分たちで楽しみながら作ったものをお客さんに喜んでもらえて、またこっちも嬉しくなるなんてこんな幸せな仕事ないよね。
T; うん。だからだんだん考え方が変わってきたかな。アートは自分のためで、デザインは人のためなんじゃないかって。
S; おー。なるほど! でもあのガラスのテーブル。脚がグネグネのやつ。 たまにああいうの作りたくなるの?
T; あーあれは...なんか急に作りたくなって...大木の根っこをイメージしたものなんですけど...
Y; あれは展示会前の追い込みの時で、今から作っても間に合わないって、喧嘩になったんだよね。でも主税君がどうしても作りたいって...なんとなく言いくるめられて...わたしは納得してないんだけど、なぜか仕上げ磨きは私がやってるっていう(笑)
S; (笑)結局そうなんだ。いいコンビだね!
T; (笑)たまにアート感覚で作りたくなる時はあるけど、あまり出過ぎないように。スパイス程度に。
Y; その辺は私が舵取りを。(笑) お客さんに喜んでもらうのが一番だからそれを喜んでくれるなら いいんだけどね。
T; そこだよね。お客さんの生活空間に僕たちの家具があって、それによってお客さんが幸せになる。そんなものが作りたいですね!
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Arts craft japanの詳しい情報はこちら http://artscraftjapan.com
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独特な感性で繊細に、時にはパワフルに進んでいく主税君。それを上手に乗りこなす祐子ちゃん。
やっぱりいいコンビでした!
工房めぐりは二人の紡ぎだす幸せの環に仲間入りするチャンス!
せひ訪れてみてください。
「つくり手×つくり手インタビュー」は、イベント開催まで、随時更新!
いろんな面白いつくり手の話は、まだまだ続きます。次回もお楽しみに!
Posted by 飛騨の木工房の会 at
21:30
│■つくり手×つくり手INTERVIEW
つくり手×つくり手INTERVIEW 第8回 ファニチャースタジオnoco
2014年09月30日

みなさん、こんにちは。
第8回目のつくり手×つくり手INTERVIEW は、ファニチャースタジオnocoさんご夫婦です。
今回はウォールナットファクトリーの福田が、清見のショールームにお邪魔して、お話を伺いました。

ーーーもともと高山に来たきっかけはたくみ塾だよね?
はい。15年前、23歳のときにたくみ塾に。
ーーー高山に来る前は何をしてたの?
東北の大学で建築をやっていました。
家具を知ったうえで、建築をやりたいと思って、たくみ塾で家具作りを学びました。
その後はオークヴィレッジ(以下 OV)の建築へ進もうと思ったのですが、
2年間家具の勉強をしているうちに、自分には家具ほうが向いているんじゃないかな、という思いも生まれていました。
ーーー木工に入ろうと思ったきっかけは?
もともとは、たまたま購入した住宅雑誌を読んでたら、その本にOVの建築と、
代表の稲本さんの特集があって、たくみ塾という家具作りの学校の存在を知りました。
東京で講演会があったときに、代表に直接お話する機会があり、そのときに高山に来るきっかけができた。
でも、実際就職しようと思って試験を受けようとしたら、その年は採用がなく、塾を出たあとは一旦実家に戻り、仕事を手伝うことに。
ーーー大学を出て、就職するつもりで高山に来たんだ。
そう、OVで就職するつもりで飛騨へ来たのですが、
当時OVへ入るためにはたくみ塾での経験が必要だったんです。笑
当時は、建築ができないなら…と、一旦実家に帰って、半年間実家の仕事を手伝いました。
ーーーご実家は自営業なの?
実家は父が一人親方で大工をやっています。
(今でも現役でお仕事をされているそう!)
そのときにちょうど、新築中の住宅があったので、
一通り現場を見てみたくて、父と兄の仕事を手伝わせてもらいました。
兄は、現在は福島の木造住宅工房で建築に携わっています。
ここで奥さんが、「うちの場合はOVに入れなかったのが、ターニングポイントだよね」笑
そうしているうちに、たくみ塾からスタッフとしてのお誘いがあり、
再び飛騨に戻り、約4ヶ月、スタッフとして働かせていただきました。
その後は高山で就職活動をするうちに、先にそこで仕事の手伝いをしていた、
たくみ塾の同期である渡部くん(remix)の紹介で、
清見町の個人工房、「川上木工」に、お世話になることに。
ーーーそうだったんだね!僕も大手木工会社の試験に落ちたから今こうしているけど、
おんなじようなきっかけがあったんだね。
今の住宅兼工房のスタイルはいつ頃から?
川上木工で約5年お世話になっているうちに、物件を探していて、
一之宮まで物件を見に行ったこともあったのですが、
知人の知人からの紹介で、今の住宅+工房の物件がちょうど見つかりました。
(庭には、住み始めたときに植えたという、やまぼうしの木が赤い実をつけていました)

ーーー丸山君は家具というよりも小物がメイン?
椅子もテーブルも、箱モノも作りますが、そうですね、今一番反響をいただいているのは、奥さんがクッション部分を制作してくれている、はりねずみのピンクッションです。木部は一つひとつ削り出して仕上げます。
昨年ぐらいから、はりねずみのピンクッションや、一輪挿し等の小物を中心に、ネットショップの方も力を入れています。
初めて展示会に行った頃は、小物が全然なかったのですが、今ではなかなか家具の制作の時間が取れないのが悩みの種です。
ーーー高山の町中でも見かけるもんね!
今年の秋、リニューアルされた、「匠館」にもブースをいただいて作品を置かせてもらっています。
あとは、福井県あわら市「金津創作の森 クラフトマーケット」、石川県七尾市、能登島「のとじま手まつり」、地元高山市清見町で開催される、「秋の清見クラフト展」、などのクラフトフェアへの
出展が決まっているので、これからそちらの準備で、またはりねずみの森ができる予定です。笑
この前もアメリカの友達に送りたいというお客さんが
訪ねてきてくれました。

ーーーショールームがいい雰囲気ですね。
改装は畳の部屋をフローリングに貼りかえて。
壁とかも、梁もそのまま。
家はここの前は借家に住んでいましが、土地を探してたり、知人に話しをしていたりしたうちに、この場所を紹介してもらって、今の場所に落ち着きました。
将来的には、家の横にショールームを作りたいですね。
―――趣味の話になって。
最近は写真を撮るのが面白いですね。
毎日の風景や物の見方が変わってきた気がします。
ーーー最後に聞きたいんだけど、木工をやってて
オモシロいなと思うこと、辛いなと思うことは?
うーーーん、(しばらく悩んだ様子で)窓がないところでの
展示会が苦手です。笑
工房で作っているのが自分には合っています。
でも、直接お客さんと話をして、そこからヒントをもらうことも多いです。
ネットショップでは、普段なかなか高山を訪れることが
できないような場所にお住まいの方からも、作品の感想をいただいたりするのが
励みになりますね。
iichiや、dクリエイターズなどの、ハンドメイドマーケットへの出品がきっかけて、百貨店での企画展や、美術館のミュージアムショップでの作品販売の機会をいただいたりと、新しい刺激をもらっています。

インタビュー後、自宅裏の畑で収穫した自家製のトマトを
ごちそうしてくれた丸山さん。
とても立派なトマト、普段スーパーでは売っていない
あまーいトマトをごちそうさまでした!
終止おだやかな丸山さんと、たまに出る関西弁が心地いい、笑顔が印象的な奥さんに
会いに、工房めぐりにおでかけください。
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ファニチャースタジオ noco の詳しい情報はこちら http://noco.hida-ch.com/
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「つくり手×つくり手インタビュー」は、イベント開催まで、随時更新!
いろんな面白いつくり手の話は、まだまだ続きます。次回もお楽しみに!
つくり手×つくり手INTERVIEW 第7回 山下木工舎
2014年09月01日

今回は、わたくし木工房大噴火、清水が同じ村に住み、子育て仲間でもある「山下木工舎」の山下森一朗くんを、自宅と工房の建つ飛騨位山の森に訪ねました。

しんちゃん(山下森一朗くん)が飛騨に来たのは僕と同時期なんだよね。
「そう、阪神の震災の2年後だね。」山下くんは神戸の出身だ。
「自分が住みたいところで暮らしたいと思ったんだ。学生の頃、中国やインドを旅したことがあって、やっぱりさぁ、田舎の方が面白いんだよね。」
僕が出会った頃の山下くんは、高山の古い町並みで人力車を引くアルバイトをしながら、オークビレッジが主宰する木工の学校「森林たくみ塾」に通っていた。
訓練でへとへとになっている他の塾生を尻目に、休みともなれば自転車に乗ってどこにでも現れる、元気いっぱいの姿が印象に残っている。
「人力車のバイトは観光案内もするから、来たばかりの僕には高山の事がたくさん勉強できて、めっちゃよかったよ。いろんな人たちと出会うのも楽しかった!一番向いてる仕事かも?笑」
今も元気いっぱいで楽しそうな山下くんはどんなモノづくりをしてるのだろう?

仕事と生活を分けて考えない
現在の山下君の仕事は、修行先で紹介されたお客さんやオークビレッジから依頼される、様々なデザインの家具を製作する下請けがメイン。
「勉強になるからね。自分の幅を超えたモノづくりをできるのがいいんだよね。」
一方、オリジナルの家具は、自分の生活スタイルの変化に合わせて産み出されていく。
子供が生まれたら絵本棚、ちゃぶ台。大きくなってお客さんが増えてきたからダイニングセット。食器があふれてきたから食器棚。
この頃は地元の人からの注文も増えてきた。近隣のホテルや、高山市の図書館、ご近所さんの個人宅など。
村の祭りや、部落の役、地元の太鼓の会などに積極的にかかわってきている山下くんらしい仕事ぶりだ。
山下くんの工房と自宅は飛騨の霊峰位山の裾を自ら切り開いた広い敷地に立っている。
「バックホーは最高だよ。木工に入る前に造園土木の会社に勤めていたのが役に立ったね。」
自分たちで樹を伐り、中古のバックホーを買ってきて斜面を造成し、石積みまでやってしまった。
今、その広い斜面には、工房と自宅の他に菜園やニホンミツバチの巣、ヤギ小屋。手作りのアスレチック遊具や木の上の秘密基地が散らばっている。
山下くんにとっては、これもすべて仕事であり生活、つまりは「生きる」ことなんだ。

借金してでも遊びたい
ここは村の子供たちにも大人気で、いつも大勢の子供たちが遊びに来る。うちの長男も常連で、我が子の近況はもっぱら山下くんから教えてもらっているほどだ。学校の先生よりたくさんの子供を知ってるんじゃないだろうか?
遊びのためなら死ぬ気で働くと言う山下くん。先日は子供ばかり12人も泊まっていったそうだ。昼間は子供たちと目一杯遊んで、徹夜で仕事。翌日は祭りに呼ばれて太鼓を披露してきた。
「子供の頃、父親に遊んでもらえなかったからね。引っ越しも多かったし。」
「自分独りで楽しむんじゃなくて、誰かと、人と一緒に楽しみたいんだ。」
そういえば、数年前に言ってたっけ。「飛騨を離れる仕事は今はしたくないんだ。子供たちと一緒にいれない時間が惜しい。」「今は借金してでも子供と遊びたい。」って

工房めぐりではツリークライミングをやるんだよね。
「うん、楽しいよ!小さい子供もおじいちゃんもおばあちゃんも簡単に高い樹に昇れるんだ。リスや鳥たちと同じ景色が見れるんだよ。」
3年前、村でツリークライミングの体験会があって、同じ部落でメインスタッフをやっている人に誘われてサポートスタッフの資格を取った。
「スタッフが増えればもっとたくさんの人に楽しんでもらえるんだけどねぇ。丈雄くん(私)の奥さんもスタッフにならんか?って口説かれてるんだよ。知ってた?」
知らん知らん。いやはや、我が家の事情は山下くんに訊くに限るな。
最後に、工房めぐりに来るお客さんにメッセージを
「まずはお友達になって下さい。」
人力車を引いてた時も、大勢の子供たちにもみくちゃにされてる時も、村の祭りの仮装大会の時も、いつも元気いっぱいの笑顔。
人のつながりを大事に、一緒に楽しむしんちゃんは自分が住みたいと思った場所で、素敵な家族とともに、深く広く根を張ることができたようだ。
この根はこれから大きな樹に育つだろう。木陰にはたくさんの笑顔が集うだろう。

プロフィール
1973年生まれ
神戸、豊岡などで幼少期を過ごし、24歳の時、高山に。
森林たくみ塾、川上木工で修業し
2000年に山下木工舎として独立
2003年高山市一ノ宮町に作業場と住まいを移転。
家族4人、イヌ1匹ネコ3匹ヤギ1頭、ウサギ2羽、ミツバチ多数と暮らす。
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山下木工舎の詳しい情報はこちら http://yamamorimokkouya.hida-ch.com
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「つくり手×つくり手インタビュー」は、イベント開催まで、随時更新!
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つくり手×つくり手INTERVIEW 第6回 白百合工房
2014年08月26日

みなさんこんにちは。
6回目のつくり手×つくり手INTERVIEW は、白百合工房さんです。
親子2代でもの作りにはげむ白百合工房さんは今年で32年目、木工房の会の中ではいちばんのベテラン工房です。
朝仕事が始まって間もない時間に訪ねると、3人のスタッフがいる工房はすでにぶんぶんフル稼働中。
仕事の手を止めて、今回は2代目の上野望さんとkino workshopの、3人でのおしゃべりとなりました。
その様子をkino workshop片岡紀子がお届けします。
白百合さんは、お父さんがはじめた工房なんだね。上野さん自身はいつからこの仕事に?
「十代の頃は木工に興味はなかったからねえ。大学を出て茨城で教師をしてたけど、2000年に家族で飛騨に戻ってきた。生まれ育った飛騨が大好きだから、いつかは戻ろうと思ってたから。だから木工はそれから」
なぜ教師に区切りを?
実は、いつだったか近所の中華屋さんでばったり会った時、酔っぱらった上野さんに聞いてみたことがあった。
なんだかツラい事情があるのではと勢いで聞いてみたのだが、意外や意外。
「教師の仕事が楽しくて楽しくてねえ。このままじゃ大人になれない、と思って帰ってきた」と!
いつも明るくて元気な上野さんらしいなあ。
そんな上野先生の教え子たちも、さぞや楽しかっただろうな。

「木工のスタートが遅かったから自分なりに勉強してみたら、知っている名前が出てきた。フレーベルとか」
フレーベル?
「幼稚園を始めた人。恩物(おんぶつ)というおもちゃのはじまりをつくった人でもあって、これだ、と思った。子どもたちとの経験から生まれるものを、子どもたちがステップアップできるものを、つくっていきたいと思った」
上野さんといえば、つみぼぼ。飛騨のさるぼぼからイメージした積木で、グット・トイ賞や高山市の推奨品として認定をうけた、上野望の最強アイテムである。
バンザイ型の人をバランスをとりながらいろんな形で積み上げられる自由な積木で、遊ぶ人も見てる人も思わず笑顔になる。
この夏、帰省もかねて行った茨城(奥さんの実家)のお世話になっているお店で、つみぼぼで遊ぶイベントも企画したとか。
飛騨への愛情、人への愛情たっぷりのおもちゃなのだ。
と、ここへ上野さんのお父さんとお母さんがおそろいでご出勤。
こんにちはーお邪魔してますーのあいさつの後、おふたりは工房へ。
早速お父さんとお母さんは息の合った仕事っぷりでスタート。
「親父の木工歴は60年(!)近い。職人だから作業の所作にきびしくて、今でも叱られる」
わたしはちゃんとした修行の時代がないから、それがちょっぴりうらやましくもある。
お父さんに弟子入りしたい衝動にかられるが、いかんいかん、我にかえる。
「親父は昔、家具メーカーの工場長をしていたこともあるから、同じものをたくさん早くきれいにつくることに知恵をしぼるのが好き。アイデアはぼく、つくりかたは親父が考える、というパターンが多いかな」
白百合工房では、スタッフや業者さんからも「お父さん」「お母さん」と呼ばれるおふたり。
温かくも仕事にきびしく、木工をこよなく愛するご両親の背中を見て、今の上野さんがいるんですね。



「この間、すごくいいことがあってね」
何々?
「子どもたちのサッカーチームのコーチをやっていて、少し格上のチームとの試合があって。雨の中1-5でうちのチームは負けたんだけど、試合は最後までどちらも一生懸命でね。あきらかにいつもと表情がちがう」
「試合が終わって子どもたちに聞いてみた。今日はどうだった?って。そうしたら、すごく楽しかった!!って。どうして負けたのに楽しかったんだろう?って今度はきいたら、相手が最後まで一生懸命だったから、ぼくらも一生懸命にできたって。勝ち負け以上のサッカーの楽しさを知った瞬間だったんやねえ」
「サッカーもおもちゃも、人と人とをつなぐって意味で同じなんだと思う。ぼくの中では同じコミュニケーションツール」
4年前から自身も地域のサッカーチームで汗を流す上野さん。
ポジションはボランチ。
「まわりを見渡してゲームをつくる仕事だから、頭も使うし発見もするし、失敗したら落ち込んだりもする」
「めちゃめちゃ走るからみんなが、がんばってくれてありがとうって言ってくれる」
ほんとだ、木工といっしょだ。
上野さんとわたしは好きな本が同じなことが多い。
いつもは木工バナシよりも、「最近なに読んだ?」的なハナシのほうが多かったりする。
今日はインタビューだからあらたまって木工バナシをしたけれど、木工もおもちゃも、サッカーも本も、上野さんの中では全部ひとつなんだ、と感じた。
いろんなことをやわらかい感性でうけとめて、それが自然にものづくりにつながっているんですね。
白百合工房さんは緑豊かな谷筋にあります。
木工房めぐりの当日はたくさんのつみぼぼがみなさんをお待ちしてますので、ぜひ遊びに行ってみてください!
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白百合工房の詳しい情報はこちら hhttp://www.tsumibobo.com
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「つくり手×つくり手インタビュー」は、イベント開催まで、随時更新!
いろんな面白いつくり手の話は、まだまだ続きます。次回もお楽しみに!
つくり手×つくり手INTERVIEW 第5回 北々工房
2014年08月22日

みなさんこんにちは。
「つくり手×つくり手インタビュー」の第5回。
今回は飛騨市河合町の山の中に工房を構える北々工房の北川啓一さんを、kino workshopの片岡清英が訪ねます。
北川さんには飛騨に来てから何かとお世話になっていて、どんな話しを聞かせてもらえるのか楽しみです。
大雨の降りしきる中、河合町へ向かいました。
あらためて北々工房はどんな感じで物作りしてますか?
「百貨店を中心に展示会をしていて、3人のスタッフとオリジナル家具とオーダー家具を半々くらい作っているよ。」
僕も一度百貨店に出展したことがあるけど窓が無く、風の吹かない空間はきつかったです。
「それは慣れだと思うけど、百貨店のいいところは沢山のお客さんと出会えることかな。」
「お客さんの声はおもしろいよ。そして一番の情報源だよ!」
「その声を生かして作ったものは必ず売れるから物作りはおもしろい!!」
飛騨に暮らしながら常に都会に暮らす人の感覚を持って作り出されるのが北々工房の家具なんですね。



北々工房の一押しはなんですか?
「飛騨のメーカーで設計をしていたから椅子は自信があるよ。」
「侃奈(じゅな)椅子は北々工房のベストセラー。長女の侃奈が生まれたときに作った子供椅子で、背板の穴は侃奈の機嫌の悪いときの口の形なんだよ。」
北々工房の家具はメーカーで培った技術でとても安定感があります。
「会社勤めの間にたくさん失敗を経験できたおかげで、工房を初めてから大きな失敗は無いかな。」
「今でこそ節や割れをデザインとして取り入れているけど、最初の頃は入れるべきかかなり悩んだよ。」
メーカーでは節や割れは基本的に捨ててしまうので、僕も以前勤めていた会社のゴミ箱から拾っていました。
移住者の多い飛騨の木工房の会の中では珍しく、生まれてからずっと飛騨に暮し物作りを続けていますね?
「飛騨は家具をつくるには最高の環境だし、飛騨を出るということ自体考えたことなかったな。」
「小学生2年生か3年生に夏休みの工作で作ったブックエンドが木工の原点。そのブックエンドは今でも改良して作っているよ!」
「それ以来夏休みが始まると工作のことばかり考えていたよ。勉強した記憶は無いけどね、、、、」
そういえば、遊び心のある北川さんの作品は、毎年9月に開催される家具のフェスティバルのコンペでいつも賞をとっていました。
物作りが大好きだから、地場産業である家具のメーカーで働くことは自然なことだったんですね。


僕が職業訓練校の時に初めて見せてもらった工房が北川さんの工房でした。
「13年間家具メーカーに勤めて、最後3年間は二足のわらじでとにかく時間が無かった。」
「独立して24時間自分のためだけに使えることがうれしくて、その時の開放感が今でも忘れられないよ!」
ショールームの壁には工房を開いたときの家族4人の写真が飾ってある。
北川さんの言葉通り、希望に満ちたうれしそうな顔が印象的でした。
「ここは冬に最低150㎝は雪が積もる豪雪地帯。でもその雪のおかげで自然が更新されて山がとてもきれいなんだよ。」
「展示会から帰ってくるとほっとするね。生まれ育った土地で安心するんだね。」
僕も飛騨に来て15年くらいだけど、飛騨は時間の流れがゆったりとしていて落ち着いて暮らせます。
豊かな自然ときれいな水がこんなに身近にある環境で物作りができるのは幸せなことですね。

どんな工房めぐりにしたいですか?
「今は物があふれている時代なので、どんな場所で、どんな人が作っているかということが大事になってくる。」
「そういう意味で工房めぐりは、スタイルの違う工房を一度に見て回れる機会なので自分に合う人や物を見つけて欲しいね!」
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北々工房の詳しい情報はこちら http://www.kitakita.info
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好奇心が強く、新しもの好きな北川さん。
今は果樹の手入れや石積みという「物作り」にはまっているそうです。
工房めぐりでは、作品だけでなく工房のまわりの作品にも目を向けて欲しいと思います。
北川さんおすすめの天生湿原は、北々工房から車で30分程。
10月の工房めぐりの頃には紅葉の見頃を迎えるのでぜひ足を延ばして豊かな自然を満喫してください!
「つくり手×つくり手インタビュー」は、イベント開催まで、随時更新!
いろんな面白いつくり手の話は、まだまだ続きます。次回もお楽しみに!
つくり手×つくり手INTERVIEW 第4回 工房まめや
2014年08月19日

みなさんこんにちは!
イベント開催日まであと約2ヶ月。開催に向けての各工房も「今年は何をみてもらおうかな」と考えているところです。
「つくり手×つくり手インタビュー」の第3回。
今回は昨年から結婚を機に、高山市朝日の築80年の家に工房と住居を移転した「工房まめや」鈴木さんを、私、キナリ木工所の坂本が訪ねます。
高山市の朝日に工房移転後、訪ねるのは今回が初めて。その暮らしぶりにも興味津々です!
では、さっそくスタートです!

「作っては捨てて、作っては捨てて」を繰り返す消費社会が嫌だった
ー高山市内から朝日への工房移転は去年ですよね。ここに決めた理由は何だったんですか?
もちろんたまたま工房兼家の手頃な物件があったっていうのが大きいんだけど、朝日には木工房の会の仲間が多く住んでるし、地元以外から来た人たちの繋がりがしっかりあった。家族も一緒だから、そういう意味で安心感もあったかな。
ー僕も飛騨が地元じゃなくて、こっちで木工をしていますけど、やはり仲間がいるのは心強いし、いい刺激にもなりますよね。
木工房の会に入ったのは、自分とは違う考えを聞ける状態にしないといけないんじゃないかと思ったからなんだよね。一人でいると、自分をどんどん肯定しだしちゃう。しんどいんだけど、今の自分のままじゃダメだって思い続けないと成長しない気がして...
ー鈴木さんは関東の出身ですよね。どういうきっかけで飛騨に来たんですか?
木工をはじめるとき、未経験から長野の木工会社に雇ってもらったんだけど、そこは主にフラッシュ(ベニヤの張り合わせ)のものが多くて、それを否定するわけじゃないし、勉強にもなったけどやっぱり「無垢の家具が作りたい」と思うようになって、二年勤めて退職して改めて無垢の家具を作っているところを探した。
いろいろ訪ねてみたけどなかなか雇ってくれなくて、3ヶ月程経ち諦めかけていた時に、ようやく雇ってくれるところが見つかった。
それが飛騨の工房だった。
ー最初から木工をやりたかったんですか?
高校を出て、最初は地元の石油会社に就職した。「自分のやりたいことが見つかるかな」と思って続けたけど、なんか違った。仕事上で「もっとこうしたい」と思ってもなかなか通らないことも多くて、自分で「こうしたい!」っていうのをやらないと気がすまないタイプなんだって事に気がついた。
5年経って、会社をやめて数ヶ月間の旅に出た。
ヨーロッパ方面の数カ国を廻ったけど、中には貧しい国もあって、そういう国に行くと金を持っている日本人から、騙して奪おうとする人たちが沢山寄ってきて...すごく嫌な気分になったけど、今日生きるために何でもアリで必死なんだと...そういう生き方に憧れる感覚にもなった。自分探しをしてる自分って情けないなって。
でも今更野蛮人に戻るようなこともどうかと、日本の恵まれた環境で育ったからこそ考えられること、先進国の人間としてやるべきことがあるんじゃないかって。当時は京都会議が開かれたりと環境問題も叫ばれ始めていて、旅の間そのことについても考えていたので「作っては捨てて、作っては捨てて」を繰り返すような消費社会を止めることなんじゃないかな、って思った。
若いから大それたこと考えるよね(笑)
そんな時「無垢の家具は100年持つ」っていう記事をみて、ものづくりをするなら「木をいじりたいな、けずってみたいな」って。
ー木工をはじめる若い人って、「ものづくりに関わりたい」っていう人と、「自分で工房をやりたい!」っていう強い思いの人に分かれるように思うんですが、鈴木さんは最初から「自分で」と思ってたんですか?
木工をやろうと思った時から独立するつもりではいたかな。工房で3年修行して自分でいろいろ作れるようになると「俺は全部できるぞ!」って気になってたけど、その後他の工房の手伝いに行くとやり方が違う...「何もできない」ってなって…。もう30歳になっていたけどプライドなんて持つべきじゃないってその時思ったかな。 それでも独立したい気持ちは強くあるんだけど資金がない... メーカーの作り方も見てみようかとも思ったので、メーカーに勤めて資金を貯めた。5年勤めてようやく資金が出来て独立。木工始めてから11年かかちゃったね。

「いきもの」が作りたいという感覚はあるかな。
ー鈴木さんの家具といえば、ダイニングテーブルや椅子、箱もの(収納家具)が多くありますが、最近は、「しずく」のかたちのモチーフの家具が多いですよね。これはどこから生まれたんですか?
始めた頃からずっと作ってるコースターがあるんだけど、実はこれも同じで...元のテーマは「花びら」だったんだけど、このかたちは水のしずくのようでもあり、母性的でもあり、生命感があるなって。
ーしかも単純な「しずく」じゃなくて、すごく微妙な線ですよね。
「いきもの」が作りたいという感覚はあるかな。人形だと最後に目を入れた瞬間にいきものになる。命を吹き込むってよく言うけど。
木でやるときには目は入れないけど、いきもののように存在しているものにしたい。そういうものって、簡単に捨てられないじゃないかと。
だけど、あまり主張の強いものは飽きてくるし、疲れる。だから普段はあくまで控えめで主張しすぎないんだけど、見るときの気分によっては励ましてくれたり、元気づけてくれたり。
なんかある意味「不細工だけど、美しい」っていう感じ。
そういうものを作るには、自分自身がそういう人間でないといけないと思うんだけど…自己否定の連続ですよ(笑)。しんどくなってやめたくなることもしょっちゅう。
ーいや、僕も「ちょっとのあいだ自分がいなかったことになればな」とか思ったりしますよ。「3ヶ月間でいいから!その間にいろいろ考えて…」とか(笑)。
百年、二百年前からある美しいものって、生命力、存在感…生きてるっていう気がして。オーラが出続けているというか、そういうものって古いとか新しいとかそういう評価がばかばかしく感じる。そういう美しいものって好みの問題じゃないと思うし、好みの問題じゃないのなら
「俺はこれが好き」がスタートじゃだめなんじゃないかと...そんなこと考えるとめんどくさいよね(笑)やりたくなくなる。
でも基本的に自分に自信がないから一生懸命変わろうとする。変わろうとしていてもどうにも変わらない、壊し続けているつもりでも残る特徴はどうにもならない。そこは信じるしかないって。

リピートしてもらってはじめてホッとして完結する気がする。
ー今はどんなかたちで木工をしていますか?
お店への卸の仕事が半分くらい。あとは自分の展示会で出会ったお客さんで、その半分くらいはリピートで買ってくれるお客さんかな。6年くらい続けてから、リピートのお客さんが少しずつ増えてきた。
ーリピートのお客さんって、一番うれしいですよね。
うん。そこで初めてホッとして完結する気がする。でも最初はいろいろ求められる以上に手をかけて、「赤字になってる!」っていうことも多かったな。お客さんに喜んでもらいたいという気持ち半分、不安半分で。
今思うとそういう経験があるから自分も成長できるし、そのときは損してもやっぱり後で自分にかえってくるのかもね。
ーまさに「損して徳とれ」ですよね。僕もいつも肝に銘じてます。でもやっぱり最初は本当に利益が出なくて苦しいんですけどね(笑)。お客さんも個人工房に家具を注文するときはそれなりに不安もあって頼んでくれる。だからこっちもその思いに応えないとという気持は強いですよね。

工房めぐりでは、自分の中でやりきったと思えるものを作ろうと思ってる。
ー去年から朝日の工房での「工房めぐり」がはじまりましたが、鈴木さんの中でこのイベントはどんなイベントですか?
僕らは普段経費をかけて遠方の展示会に行くんだけど、そのときは「売らないといけない」からどうしても作るものも縮こまってしまいがちで。工房めぐりでは、自分の中でやりきったと思えるものを作ろうと思って。売れる売れないっていう雑念を取ったものを作ろうと。
このイベントは地元の人にも来てもらいたいし、遠くから足を運んでくれる人にも楽しんでもらえるものを作りたい。自分にとっても良い機会を与えてくれるイベントだと思ってる。
ー展示場所も、今住んでいる築80年の家でも展示ですね。
自分が「ずっと残っていく家具」という意識で作ってるんだけど、この家に置いたとき、自然と「合ってるな」という感じはあるかな。80年経った家に合うんだったら、この先80年経った家にもあうんじゃないかな、と思ったりする。80年先のことなんて分からないけどね(笑)。
朝日のこの土地で、ここで家具を作ってるというのを想像しながら、新作を楽しんでもらえたらうれしいです。
ー場所はものづくりに影響しますよね。
今作っている家具は、飛騨に住んでいるからできたものだと思う。冬の間の寒さとか、雪かきだって毎日しなくては後で痛い目に合うのは自分なわけで...そういう生活が生真面目さを生むんだよね。だから、本当は「真冬の工房めぐり」が一番面白いんじゃないかと思ったりする(笑)。
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工房まめやの詳しい情報はこちら http://www.hidatakayama.ne.jp/mameya/
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木工に対し、ひたすらストイックともいえる理想を追い求める鈴木さん。今年から始めたブログには、朝日での暮らしやものづくりの日々の熱い思いが伝わってきます。僕もその姿勢を見習わないと…です!
みなさんも直接会って、ぜひその人となりに触れてみてくださいね!
ここでは書ききれない、書けない?お話もたくさん。心地よい秋の一日、飛騨の工房につくり手にぜひ会いにきてくださいね♪
「つくり手×つくり手インタビュー」は、イベント開催まで、随時更新!
いろんな面白いつくり手の話は、まだまだ続きます。次回もお楽しみに!
つくり手×つくり手INTERVIEW 第3回 kino workshop
2014年08月17日

みなさんこんにちは。
「つくり手×つくり手インタビュー」の第3回。
今回は2007年から飛騨市に住居兼工房を構えるkino workshopの片岡夫妻を、15年来の友人でもある木工房大噴火、清水丈雄が訪ねます。
いつもおいしいご飯を食べさせてくれる片岡夫妻。今回もランチを食べながらのお話です。

マイペース×慎重派。二人工房
片岡君は木工の学校(岐阜県立高山高等技能専門校:現 木工芸術スクール)で同期だったね。歳も同じで。のりちゃん(紀子さん)は年下だけど先輩なんだよね?
「私の方が2年早かった。大学を出て2年働いてから学校に入ったから。」
大学では?
「専攻は建築。建築は今でも大好き。新旧問わず、木のも石のも。倉とか小屋とかも。」
「どこかでかける用事があるときは、ガーッて調べて、観に行かずにいれない。」
おっとり喋るのりちゃんは3姉妹の末っ子。小さい頃、お姉ちゃんに「あんた、早く喋ってみな」と意地悪言われて育ったマイペースな人。
片岡君は学校の前は何を?
「大学出てからは、就職はしないで、バイトしては旅に出てたんだ。旅が好きというより、やりたいことがなかったからね。」
「バイトしててもただの業者だから、お客さんと接点がない。その頃、人と話した記憶がなくてね。これでは面白くない。やはり手に職を持たなきゃと思って学校に入ったんだ。」
「木工に夢をもって入ったわけじゃなくて、ちょっと面白そうだなって程度の気持ちだった。」
好きなことに一直線のマイペースなのりちゃんと、慎重に生き方を探る片岡君。二人の工房はどんな感じで回っているのだろうか?

何もない暮らしから始めた
「紀子は、作るのが好きなんだよ。」
「そう!とにかく作りたい。だから他の事は清英さん(片岡君)に任せておいて、「どう?こんなに作ったわよ!」って見せるのが好き」
「僕はいつも材の調達に追われてるよ」笑
「僕はお客さんに「これステキ!」って言ってもらうのが好き」
そうか、展示会に出るのはほとんど片岡君だもんね。
「私は外に出ると疲れちゃう。猫くらいダメ」
んっ?
「トシちゃん(猫)が外に出たいってねだるから連れ出してあげるんだけど、10分もしないうちに帰りたいって啼き始める」と足元の白猫を見つめながら話す。
「ここには畑があるから、買い物にあまり出かけなくていいの。そこが好き」
「でもね、清英さんは買い物好きなんだよ」と秘密をばらすようにいたずらな目で言う。
「うん、僕はモノが好きだからね。でも飛騨に越してきた時は何もない暮らしから始めたんだ」
目の前に安いものがあっても、不便でも本当に気に入ったものでなければ手を出さないという暮らし方。そういえば木工の学校のころ、「これいいでしょう?」と、いろんなモノをうれしそうに見せてくれた。それは時にザルだったり、カボチャだったりした。その中には小さな木の切れ端もあった。それを撫でる大きな手からは愛着がにじみ出ていた。
「気に入ったものに出会うのって時間がかかるでしょ。だから自分で作り始めたんだ」
愛情たっぷりに育てた畑の収穫をふんだんに使った夏野菜のカレーと、手作りドレッシングのスパイスの香りが食欲をそそる“ライタ”(インド風サラダ)を昼食にいただきながらさらに話を聞いた。もちろんお皿もボウルも丁寧に選び出されかわいがられているモノたちだ。

全部、自分たちの手で
片岡家はずっとモノづくりのスタンスがブレないね。
「この土地に自分の家を建てて腰が据わったんだ。ここで生きていくんだなって。楽だよね」とのりちゃんを見る。
「そうだね、モノを作るのも安心して作れる!」
「家具を自分で作って、出来上がってうっとりするでしょ。買ってくれた人もうっとりする。」「作るのがうれしくて、出来上がってうれしくて、お客さんが喜んでるのがうれしくて。だから他人に任せちゃもったいない。すべてのプロセスを自分たちでやりたいんだ。」
と嬉しそうに話す二人。
丁寧に取り組んできた彼らの暮らしはどこをとっても愛情が詰まっている。それは作ることも同じで、愛情を注げるものばかりを時間を掛けて作り出してきたから、作ることがうれしい。作ることと暮らすことが一体になっている。
作品の一つ一つ、お客さん、友人、仲間たち、もちろん猫たち。畑の土や、料理、器。彼らはお昼寝のことまで愛着をこめて話すので、僕の中の暗い気持ちなどたっぷりな愛に押し流されてしまう。
「近所のおじさんがね、畑の出来はどうだ?って訊くから、
「ナスがいいです!」って元気よく言ったの。そしたら
「あれでいいんか?だって。アハハハ」
「だってとってもよくできたんだよ!」
ナスの一本にもたっぷり愛情が込められているんだ。
最後にメッセージ
「ゆっくり椅子に座って、お茶を飲んでいってください」
きっとそれだけで、気持ちが洗われて帰り道には笑顔が浮かんでいることだろう。心地よい時間があります。ぜひ、訪ねてみてください。
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プロフィール
片岡清英1969年生まれ
片岡紀子1970年生まれ
’96,’98岐阜県立高山高等技能専門校卒業
2000年からkino workshopを開く
2007年工房兼自宅を飛騨市に構える。
ジローとトシコ、2匹の猫と同居。
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kino workshopの詳しい情報はこちら http://www.kinoworkshop.com
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「つくり手×つくり手インタビュー」は、イベント開催まで、随時更新!
いろんな面白いつくり手の話は、まだまだ続きます。次回もお楽しみに!
つくり手×つくり手INTERVIEW 第1回 木工房大噴火
2014年07月11日

みなさんこんにちは!
2014年も毎年恒例の「飛騨の木工房めぐり~つくり手たちのいるところ~」の開催が決定しました。
「秋まで待てない!」とご期待くださっている方もたくさん(多分)いらっしゃるでしょう。
そこで、今年はいまから、工房めぐりプレ企画。題して
「つくり手」×「つくり手」INTERVIEW
をはじめます!
イベントでは、直接そのつくる「場」と「人」に触れていただくことができますが、初めての方だと、どこに行ったらいいのか分からないという方もいらっしゃると思います。
この企画では、工房めぐり体験をより深いものにしていただくべく、様々なつくり手の素顔を同じく「つくり手」からの突撃インタビューでお見せしていきます。ふだんは自分の中にしまっていた思いも、つくり手同士の話から、にじみ出てくるかもしれません。
第1回は、木工房大噴火の清水丈雄さんの工房を、私、キナリ木工所の坂本が訪ねます。
では、さっそくインタビュースタートです!

椅子はいちど座ってみてもらった人にしか売れないんだよね。
ーでは、まず。清水さんの工房はどんなところですか?
うちの工房は川沿いにカッコウが鳴いて、遠く北アルプスを望み、時おりチャペルの鐘の音が聞こえる…そんなところにあります。
…実は川までの間に線路を挟んで、北アルプスの間には電線が何本も邪魔をしてて、チャペルも昔からある結婚式場だったりするんだけどね(笑)。カッコウは本当に鳴いてるんだよ。
ー(笑)けっこう高山のまちなかに近いところですもんね。でも目の前は田んぼもあってのどかだし、線路沿いで機械の音もあまり気にしなくていいし。僕個人的にはいちばんいい場所だと思いますよ。
木工房の会のメンバーは、個性豊かで木工のやり方もいろいろですが、清水さんはどんなやり方でされていますか?
うちは座面や背もたれが桐材でできたずっと座っても疲れない椅子を中心に、木の元々持っているかたちを生かしたテーブル、ヒノキのランプがメインだね。椅それを全国の百貨店をまわってお客さんに直接会って買ってもらうというやり方をしてる。
ー直接会ってというのは、こだわりがあるんですか?
例えば椅子の話になると、お客さんの体型とか座り方って一人ひとり違うんだよね。うちの椅子はちょっと他の椅子とは見た目も座り心地も違うんだけど、座る人によって、高さだけじゃなくて、腰の当たり方とか座面の奥行きだったり、ちょうどいいかたちは変わってきたりする。極端に言えば、家族4人の椅子のセットだと全員違うつくりじゃないとちょうどいいかたちにならない。だから、椅子はいちど座ってみてもらった人にしか売れないんだよね。そういう意味で、直接会って売るかたちにしてるんだ。
ー座面や背もたれまで変えてるんですか!僕はそこまでようやりませんわ…。しかし、桐材を使うっていうのは桐箪笥なんかでは普通ですけど、椅子だと珍しいですよね。
桐のいいところは、やわらかくて長い時間座ってもおしりが痛くなりにくいことと、冬でもひやっとしにくくて夏もさらっとしてるところ。でも最初から桐を使ってたわけじゃないんだよ。
ーじゃあ、桐を使う発想はどこから生まれたんですか?
木工を始める前に、世界各地や日本中を旅してたんだよね。グリーンランドの先住民の狩猟生活に触れたり、日本中をバックパックひとつであてもなくいろいろまわってた。そのときたまたま福島県の会津で300年も前から桐をずっと育てて、桐箪笥の材にしてるところに出会ったんだ。そのときは木工してなくて、材料とは考えもしなかったんだけど、数年後木工を始めて、機械もチェンソーとかしかないし「削ってつくるしかない」っていうときに、桐の切り株みたいな太い端材をそこからもらって、削りだして椅子を作ったんだ。今の椅子とは全然違うんだけど、なんかいい感触だった。
ずっと会社勤めしながらいろいろ作ってたんだけど、独立して、今のかたちの椅子のベースを作った。最初は桐は箪笥に使う高級材だという認識がお客さんに強いみたいで、「桐に座るなんでとんでもない!」と言う方がいたり、なかなか座ってもらうのにも苦労したんだ。そうしているうちに、お客さんから「ここはこうなってるほうが座りやすい」とか、「桐って座ってて気持いいね」とか言ってくれる人が増えてきて、お客さんの声に応えているうちに、いまのかたちの椅子になったんだ。だから、この椅子は「お客さんと一緒に作った作品」なんだ。

桐の椅子は、「お客さんといっしょに育ててきてる」っていう感覚があるから、自信がもてるんだ。
ー僕は会の中でも一番木工歴が短くて自分で始めてからも3年なんですが、一人で木工をやって食っていくのは改めて大変だな、と感じてます。清水さんは最初から「こうしたらうまくいく」っていうのは見えてたんですか?
いや、そんなの全然ないよ(笑)。最初は木を削り出しながら、自分の中でいいと思うかたちを探ってってところから始まって。そうしているうちに自分のなかでいいかたちが生まれてくる。自分がいいと思ったものを作る。
最初は同じもをを持っていっても全然売れなかったりしたけど、お客さんにいいって言ってもらったり、アドバイスを取り入れるうちに、自分の中にも確信が生まれてきて、自信を持って接客できる。
それはやっぱり「お客さんといっしょに育ててきてる」っていう自信があるからなんだよね。お客さんと出会えば出会うほど、その椅子っていうのはよくなっていく。それを自分で自覚しながら、この椅子がお客さんにとってどれだけ価値があるのかっていうのをお客さんが教えてくれる。そうすると自信をもって「どうぞ」って言える。その自信だと思う。
その積み重ねで、ここ数年はいい手応えを得られるようになったんだと思うよ。
ー「お客さんといっしょに育てる」っていうのはいい言葉ですね。いい家具を育てて、ちゃんと価値を伝えること。個人の木工房の多くは厳しい環境にあると思いますが、そういう視点で地道に積み重ねることが大事なんですよね。
僕から見ても、今の清水さんはいい感じにお客さんを得て、家具を作るという流れにあると思うんですが、課題はありますか?
今は木工房の会と百貨店のイベントへの出展でまわってるんだけど、全国をまわってると経費もばかにならないし、展示会ではスペースの都合で一部の家具しか持っていけない。飛騨はせっかく遠方から人が集まる観光地なんだし、自分の作ってる場所でいろんな家具をじっくり見てもらえるのが理想なんだ。実は今、工房の一部をショールームに改装する計画がスタートしていて、お客さんに家具を見てもらうのはもちろん、ワークショップをやったり、いろんなつくり手の人の作品を置いたり、イベントスペースとして使ってもらう場所にしたいな、と思ってるんだ。
「ヨガと瞑想」とか、いろいろ面白いことを考えてる人もいるんだ。
それに、作る過程もみんなで楽しめたらいいなと。内装は土壁と思ってるんだけど、左官の職人さんと、興味のある学生さんが一緒に手伝って学ぶとかね。
ー飛騨にはたくさんの人が観光で来られますけど、みんな古い街とか温泉だけをまわって帰るっていうのはもったいないですよね。ものづくりの町として、「あそこにいけば面白いことやってる」っていう場所になるといいな、と思います。なんか、ワクワクしますね!ショールームの完成が待ち遠しいです。
これを見るために、飛騨に来るとか、ここで展示したいからって言って遠くから作家さんが来てくれる…。
工房めぐりのイベントは年に1回だけど、いつでも工房をめぐって面白い体験ができるようになるといいよね。

やっぱり縄文人の知恵ってすごいと思うんだ。
ー清水さんは関東の出身で、木工をきっかけにこっちに移住されたんですよね。飛騨での生活は十数年になると思いますが、いかがですか?
こっちでは工房と別の場所に家を借りて、畑で野菜を作ったり、キノコを山に採りにいったり、できるだけ自給できるようにと思って生活してます。畑で芋を作ってたくさん収穫できたら、苦しいときでも「いや、まだこんだけ芋があるからまだやっていける!」と思って頑張れたりする。家の近くには宮川の源流があるんだけど、夏は息子たちを連れて川に入ったり、山を探検したり。普段忙しくてちゃんと相手できないことも多いから、夏はちょっと仕事の手を緩めて、毎年こどもと遊ぶ時間を作ってるんだ。
最近は、息子と「矢じり」づくりにはまってて。飛騨に「下呂石」っていう石があって、層になってて割るとナイフみたいになる。それをうまく割っていくと「矢じり」になるんだ。息子と一緒にいい矢じりになるよういろいろ工夫して、本も調べるんだけど、情報がないんだ!今は何でもネットで調べる時代だけど、そこには情報がない。だから自分たちでやるんだけど、やっぱり縄文人の知恵ってすごいと思うんだ。
生きていくために狩りをして、食うものがなかったら死んでしまう。そんな中で、獲物を得るための矢じりには、ただの道具としての役割を越えた造形を感じるんだよね。「祈り」とか込められてるんじゃないのかという。
今は何でも買えば手に入る時代だけど、僕はそんなのが何にもない縄文人の生活に憧れる。もちろん、本当になることなんてできないけど、そんな体験ができる飛騨の自然の環境は、やっぱり自分に合ってると思うんだ。
ー縄文人になるなんて…僕は考えたこともないです!でも、「何でもある」生活じゃなくても人は生きていけるんだろうな、と最近思ったりしますね。

工房めぐりでは、ぜひ「人」に触れて、根掘り葉掘り話を楽しんでもらいたい
ー工房めぐりのイベントでは、どんなところを見てもらいたいですか?
今年はショールームの改装中だから、うちでパーティはできないんだけど、ちょとした「カウンターBar」を作る予定にしてるのでお楽しみに!工房の改装も、竹で編んだ枠に土壁を塗って洞窟みたいにしたり、面白いことをやってるから、そんな改装風景を見てもらうのも面白いと思うよ。
ーでは、最後に。工房めぐりのイベントにいらっしゃるお客様に向けてひとこと。
メンバーそれぞれのつくってるものも面白いんだけど、面白いメンバーが揃ってるんで、ぜひ「人」に触れて、根掘り葉掘り話を楽しんでもらいたいですね。面白そうな人を見つけて、会いにいく。それが一番の楽しみ方かな、と思います。
僕自身、いろんな方とゆっくりお話できることを楽しみにしています。Barで手づくりのやまぶどうジュースや山で採ってきたキノコのおつまみをご用意してお待ちしています。下呂石の矢じりのワークショップもやっちゃおうかな?
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木工房大噴火の詳しい情報はこちら http://www.daifunka.com
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第1回のインタビュー、いかがだったでしょうか?
普段よく清水さんの工房を訪ね、木工談義につき合ってもらっていますが、本当にいつも話のネタの尽きない清水さん。
みなさんも直接会って、ぜひその人となりに触れてみてくださいね!
ここでは書ききれない、書けない?お話もたくさん。心地よい秋の一日、飛騨の工房につくり手にぜひ会いにきてくださいね♪
「つくり手×つくり手インタビュー」は、イベント開催まで、随時更新!
いろんな面白いつくり手の話は、まだまだ続きます。次回もお楽しみに!