つくり手×つくり手INTERVIEW 第4回 工房まめや
2014年08月19日

みなさんこんにちは!
イベント開催日まであと約2ヶ月。開催に向けての各工房も「今年は何をみてもらおうかな」と考えているところです。
「つくり手×つくり手インタビュー」の第3回。
今回は昨年から結婚を機に、高山市朝日の築80年の家に工房と住居を移転した「工房まめや」鈴木さんを、私、キナリ木工所の坂本が訪ねます。
高山市の朝日に工房移転後、訪ねるのは今回が初めて。その暮らしぶりにも興味津々です!
では、さっそくスタートです!

「作っては捨てて、作っては捨てて」を繰り返す消費社会が嫌だった
ー高山市内から朝日への工房移転は去年ですよね。ここに決めた理由は何だったんですか?
もちろんたまたま工房兼家の手頃な物件があったっていうのが大きいんだけど、朝日には木工房の会の仲間が多く住んでるし、地元以外から来た人たちの繋がりがしっかりあった。家族も一緒だから、そういう意味で安心感もあったかな。
ー僕も飛騨が地元じゃなくて、こっちで木工をしていますけど、やはり仲間がいるのは心強いし、いい刺激にもなりますよね。
木工房の会に入ったのは、自分とは違う考えを聞ける状態にしないといけないんじゃないかと思ったからなんだよね。一人でいると、自分をどんどん肯定しだしちゃう。しんどいんだけど、今の自分のままじゃダメだって思い続けないと成長しない気がして...
ー鈴木さんは関東の出身ですよね。どういうきっかけで飛騨に来たんですか?
木工をはじめるとき、未経験から長野の木工会社に雇ってもらったんだけど、そこは主にフラッシュ(ベニヤの張り合わせ)のものが多くて、それを否定するわけじゃないし、勉強にもなったけどやっぱり「無垢の家具が作りたい」と思うようになって、二年勤めて退職して改めて無垢の家具を作っているところを探した。
いろいろ訪ねてみたけどなかなか雇ってくれなくて、3ヶ月程経ち諦めかけていた時に、ようやく雇ってくれるところが見つかった。
それが飛騨の工房だった。
ー最初から木工をやりたかったんですか?
高校を出て、最初は地元の石油会社に就職した。「自分のやりたいことが見つかるかな」と思って続けたけど、なんか違った。仕事上で「もっとこうしたい」と思ってもなかなか通らないことも多くて、自分で「こうしたい!」っていうのをやらないと気がすまないタイプなんだって事に気がついた。
5年経って、会社をやめて数ヶ月間の旅に出た。
ヨーロッパ方面の数カ国を廻ったけど、中には貧しい国もあって、そういう国に行くと金を持っている日本人から、騙して奪おうとする人たちが沢山寄ってきて...すごく嫌な気分になったけど、今日生きるために何でもアリで必死なんだと...そういう生き方に憧れる感覚にもなった。自分探しをしてる自分って情けないなって。
でも今更野蛮人に戻るようなこともどうかと、日本の恵まれた環境で育ったからこそ考えられること、先進国の人間としてやるべきことがあるんじゃないかって。当時は京都会議が開かれたりと環境問題も叫ばれ始めていて、旅の間そのことについても考えていたので「作っては捨てて、作っては捨てて」を繰り返すような消費社会を止めることなんじゃないかな、って思った。
若いから大それたこと考えるよね(笑)
そんな時「無垢の家具は100年持つ」っていう記事をみて、ものづくりをするなら「木をいじりたいな、けずってみたいな」って。
ー木工をはじめる若い人って、「ものづくりに関わりたい」っていう人と、「自分で工房をやりたい!」っていう強い思いの人に分かれるように思うんですが、鈴木さんは最初から「自分で」と思ってたんですか?
木工をやろうと思った時から独立するつもりではいたかな。工房で3年修行して自分でいろいろ作れるようになると「俺は全部できるぞ!」って気になってたけど、その後他の工房の手伝いに行くとやり方が違う...「何もできない」ってなって…。もう30歳になっていたけどプライドなんて持つべきじゃないってその時思ったかな。 それでも独立したい気持ちは強くあるんだけど資金がない... メーカーの作り方も見てみようかとも思ったので、メーカーに勤めて資金を貯めた。5年勤めてようやく資金が出来て独立。木工始めてから11年かかちゃったね。

「いきもの」が作りたいという感覚はあるかな。
ー鈴木さんの家具といえば、ダイニングテーブルや椅子、箱もの(収納家具)が多くありますが、最近は、「しずく」のかたちのモチーフの家具が多いですよね。これはどこから生まれたんですか?
始めた頃からずっと作ってるコースターがあるんだけど、実はこれも同じで...元のテーマは「花びら」だったんだけど、このかたちは水のしずくのようでもあり、母性的でもあり、生命感があるなって。
ーしかも単純な「しずく」じゃなくて、すごく微妙な線ですよね。
「いきもの」が作りたいという感覚はあるかな。人形だと最後に目を入れた瞬間にいきものになる。命を吹き込むってよく言うけど。
木でやるときには目は入れないけど、いきもののように存在しているものにしたい。そういうものって、簡単に捨てられないじゃないかと。
だけど、あまり主張の強いものは飽きてくるし、疲れる。だから普段はあくまで控えめで主張しすぎないんだけど、見るときの気分によっては励ましてくれたり、元気づけてくれたり。
なんかある意味「不細工だけど、美しい」っていう感じ。
そういうものを作るには、自分自身がそういう人間でないといけないと思うんだけど…自己否定の連続ですよ(笑)。しんどくなってやめたくなることもしょっちゅう。
ーいや、僕も「ちょっとのあいだ自分がいなかったことになればな」とか思ったりしますよ。「3ヶ月間でいいから!その間にいろいろ考えて…」とか(笑)。
百年、二百年前からある美しいものって、生命力、存在感…生きてるっていう気がして。オーラが出続けているというか、そういうものって古いとか新しいとかそういう評価がばかばかしく感じる。そういう美しいものって好みの問題じゃないと思うし、好みの問題じゃないのなら
「俺はこれが好き」がスタートじゃだめなんじゃないかと...そんなこと考えるとめんどくさいよね(笑)やりたくなくなる。
でも基本的に自分に自信がないから一生懸命変わろうとする。変わろうとしていてもどうにも変わらない、壊し続けているつもりでも残る特徴はどうにもならない。そこは信じるしかないって。

リピートしてもらってはじめてホッとして完結する気がする。
ー今はどんなかたちで木工をしていますか?
お店への卸の仕事が半分くらい。あとは自分の展示会で出会ったお客さんで、その半分くらいはリピートで買ってくれるお客さんかな。6年くらい続けてから、リピートのお客さんが少しずつ増えてきた。
ーリピートのお客さんって、一番うれしいですよね。
うん。そこで初めてホッとして完結する気がする。でも最初はいろいろ求められる以上に手をかけて、「赤字になってる!」っていうことも多かったな。お客さんに喜んでもらいたいという気持ち半分、不安半分で。
今思うとそういう経験があるから自分も成長できるし、そのときは損してもやっぱり後で自分にかえってくるのかもね。
ーまさに「損して徳とれ」ですよね。僕もいつも肝に銘じてます。でもやっぱり最初は本当に利益が出なくて苦しいんですけどね(笑)。お客さんも個人工房に家具を注文するときはそれなりに不安もあって頼んでくれる。だからこっちもその思いに応えないとという気持は強いですよね。

工房めぐりでは、自分の中でやりきったと思えるものを作ろうと思ってる。
ー去年から朝日の工房での「工房めぐり」がはじまりましたが、鈴木さんの中でこのイベントはどんなイベントですか?
僕らは普段経費をかけて遠方の展示会に行くんだけど、そのときは「売らないといけない」からどうしても作るものも縮こまってしまいがちで。工房めぐりでは、自分の中でやりきったと思えるものを作ろうと思って。売れる売れないっていう雑念を取ったものを作ろうと。
このイベントは地元の人にも来てもらいたいし、遠くから足を運んでくれる人にも楽しんでもらえるものを作りたい。自分にとっても良い機会を与えてくれるイベントだと思ってる。
ー展示場所も、今住んでいる築80年の家でも展示ですね。
自分が「ずっと残っていく家具」という意識で作ってるんだけど、この家に置いたとき、自然と「合ってるな」という感じはあるかな。80年経った家に合うんだったら、この先80年経った家にもあうんじゃないかな、と思ったりする。80年先のことなんて分からないけどね(笑)。
朝日のこの土地で、ここで家具を作ってるというのを想像しながら、新作を楽しんでもらえたらうれしいです。
ー場所はものづくりに影響しますよね。
今作っている家具は、飛騨に住んでいるからできたものだと思う。冬の間の寒さとか、雪かきだって毎日しなくては後で痛い目に合うのは自分なわけで...そういう生活が生真面目さを生むんだよね。だから、本当は「真冬の工房めぐり」が一番面白いんじゃないかと思ったりする(笑)。
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工房まめやの詳しい情報はこちら http://www.hidatakayama.ne.jp/mameya/
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木工に対し、ひたすらストイックともいえる理想を追い求める鈴木さん。今年から始めたブログには、朝日での暮らしやものづくりの日々の熱い思いが伝わってきます。僕もその姿勢を見習わないと…です!
みなさんも直接会って、ぜひその人となりに触れてみてくださいね!
ここでは書ききれない、書けない?お話もたくさん。心地よい秋の一日、飛騨の工房につくり手にぜひ会いにきてくださいね♪
「つくり手×つくり手インタビュー」は、イベント開催まで、随時更新!
いろんな面白いつくり手の話は、まだまだ続きます。次回もお楽しみに!
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